5.息を止めた後の空気は極上の味がする!

   ある年の暮れのことです。

   大きなお屋敷の玄関先に一人の女性が訪れて、今夜どこでもよいから泊めて欲しいと願いました。ところがその容姿があまりにも歓迎しがたいものだったので主人はあっさり断ってしまいました。

   しばらくすると別の女性が現れます。

  同じように一宿を願いますが、先程とは打って変わって、清潔感に満ちた美女でした。

  当然、主人は快く受け入れました。

  するとその女性が「ところで、私よりも少し前にこちらに伺った者がいたはずですが?」と尋ねました。

  主人は「はいはい、確かにおりましたがあまりにも醜い姿でまるで貧乏神のようでありましたからたちまちに追い返しましたよ」と答えます。

 「そうですか、それは残念でした。あれは私の妹なのです。二人はいつもいっしょにいるのが当たり前ですので私ひとりが泊めて頂くわけには参りません」と言い残すと足早に去ってしまいました。

  この二人連れ、実は福の神である吉祥天(きちじょうてん)と貧乏神である黒闇天(こくあんてん)でした。

           

   このお話し、幸せだけに目を向けていく人生などありえないという教えを説くものですが、その道理を理解することはかなり難しいものです。

  人生には楽もあるが、それ以上の苦もある。好調な時があり不調時もある。

  つまりは幸と不幸は背中合わせです。対となるものの存在を認める知恵を身に付ければこの手につかめるものが目の前に現れてきます。

  耐え抜いた後にある楽は素晴らしいものです。

  今、我慢出来るまで息を止めてみて下さい。最初に吸った空気は極上の味でしょう?!。