14.良い心は良い顔をつくり、良い顔は自分を生かす

 

  毎年四月八日はお釈迦さまのご縁日として花祭りが行われます。そのお釈迦さまにまつわる説話をひとつご紹介しましょう。


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 インドのある王家に容姿のとても醜い娘がおりました。父は彼女を城内に幽閉して一歩も外へ出すことなく侍臣へも口外もきつく禁じました。

 侍臣の一人に命令をもってめとらせ離宮を与えた上で決して城外に出さないことを誓わせます。

 城外で宴会に招かれる時はいつも単身で出席するので主催者は不思議に思い必ず夫人同伴で参加するように決まりをつくり違反者には罰を与えることにしました。


 それでも夫は仕打ちを覚悟でいつもひとりで出席していました。

度重なる罰を受けて帰宅する夫の姿にその身を案じた妻は、夫が外出する度に部屋にこもるとひたすら仏に念じ続けました。


 するとその真心が通じたのか彼女の周囲を光が輝きはじめやがて光明が全身にみなぎると天女のように美しい王女と変身していったのでした。

 一方、疑い止まない参加者たちはこれほど仕打ちを受けても連れてこないのは余程醜いかとびきりの美人に違いないと事実を確かめることにしました。


 さっそく実行開始。夫を酔いつぶして鍵を拝借し離宮に入り込むとなんと見目麗しい美女がいたのです。

 帰宅した夫は驚き王と共にお釈迦さまに訳を尋ねると、夫を思う妻の真心が仏に通じたものだと教えられました。

 私たちはこの世において命とともに与えられた立場というものを持っています。


 自身の地位、職業、そしてあるべき姿勢に真心をもって対処すれば、それを生かせる、それに似合いの良い顔になるはずです。