光野浩一、某日の記憶のかけら。月一回、一日分のみ掲載。

 


Sep.17th.2002






間も無く逝くと判っていたその人に、何も言えないままだった


「お元気ですか?」「はやく良くなってください」「ご自愛ください」

どれをとっても軽薄な言葉

ささくれは喉深くに刺さったまま



熱を失ったその人の肉体/生き生きと輝くスナップの影

どちらがリアルと言えるのだろう


寿ぎのクリップアートを絶え間なく滲ませる遺品のワープロ

 

闇深い極寒の駅、コートの襟越しにひとり見た灯りに似る