トランクスも慌てて後を追う。
悟天は超サイヤ人になってもいないのに,信じられないスピードで空を飛んでいた。
「あいつ,あんなに速かったっけ」
舌打ちをしながら,トランクスは超サイヤ人へと変化すると,
加速して悟天に追いつき,その手を掴んだ。
「はっ,離してよ!!」
悟天はトランクスと目も合わせようとせず,手を振り払おうともがいた。
「悟天! おいったら!!」
両腕を掴み,力任せに自分のほうを向かせると,
悟天その目を大きく見開いて,
「離せったら!!」
と叫ぶと,超サイヤ人へと変化して,トランクスの腕を振りほどき,
そのまま振り向きもせずに飛び去ってしまった。
「悟天・・・・・・」
その場に取り残されたトランクスは,
「何やってんだろ・・・オレ・・・」
ぼそっとつぶやくと,自分の部屋へと戻った。
「・・・何だ今のは」
悟天が飛び出した窓から再び自分の部屋へ戻ろうとしたトランクスを,
ベジータが後ろから呼び止めた。
「パパ・・・」
「貴様ら,その年になってまだ闘いごっこなんかしてやがるのか」
どうやら,トランクスたちの激しい気の変化を察して,外に出てきたらしい。
「そ,そんなんじゃ・・・」
「そんなことをしている暇があったら,少しは修行のひとつもしたらどうなんだ」
「パパには関係ないよ!」
思わず怒鳴ってしまってから,トランクスはハッとしてベジータに視線を向けた。
思った通り,ベジータは険しい眉をますます険しくひそめると,声を低くして言った。
「このオレにいつからそんなでかい口を利くようになった」
「ご,ごめんなさい・・・」
悟天のことで頭がいっぱいのトランクスも,ベジータを怒らせるような勇気はとてもなかった。
「まったく,カカロットの息子といい,平和だからって軟弱になりやがって」
ベジータは吐き捨てるように言うと,別の入り口から家の中に入っていってしまった。
トランクスは,自分の部屋に戻ると,悟天の座っていた場所に,
その温もりを確かめるように手を伸ばした。
「はぁ・・・・・・オレ,バカだな・・・」
悟天を,傷つけたいわけではなかった。
けれど,悟天がナンパしに行こうと誘ったり,
女の子とデートしているのを見たりするたびに,
いつも心の奥にもやもやしたものがあって,気持ちが晴れることがなかった。
幼い頃から,自分を慕って何をするにも一緒だった,弟のような存在・・・。
しかしそれが次第に「弟」に対する感情でなくなったのは自分だけだったのか・・・。
トランクスは,理性の糸が切れた自分の行動に激しい後悔を感じていた。
一方悟天は,流れ落ちそうになる涙を必死でこらえながら,
いつものたった半分の時間で,パオズ山にある自分の家へと帰ってきた。
勢いよくドアをあけて家に飛び込むと,
ちょうど外に出ようとしていた悟空に正面からぶつかってしまった。
「おっでれえた〜〜,おい,悟天一体なにやってんだ?」
能天気に悟空がたずねる。
サイヤ人は戦闘民族であるため,なかなか年を取らないのと,
悟天が幼少の頃,7年もあの世で過ごしていたため,
悟空は孫がいるような年齢にはとても見えなかった。
そして悟天は,この父に,見分けがつかないほど似ていた。
見間違えられたくないために強引に変えた,そのヘアースタイルを除いて・・・。
悟天は,悟空と一瞬目を合わせたが,すぐにそらすと,
何も言わずに自分の部屋へ向かおうとした。
「あれ? なんだ,おめえ泣いてんのか?」
父にそう言われて,悟天ははじめて自分の頬に涙がこぼれているのに気づいた。
いったんそれに気づくと,次々に流れ出る涙を止めることはできなかった。
「・・・・・・・・・」
言葉なく涙を流す息子に,悟空は無造作に手を伸ばすと,頭をくしゃくしゃと撫でた。
「おいおい,どうしたってんだ?」
父の前で涙を流すなんて,何年ぶりだろう。
12,3の頃から変に大人びて,子どもらしい様子を見せようとしなかった悟天の,
久々に見せた,子どもの顔だった。
「おっかしなやつだなあ」
悟空はそのまま,特に理由も聞かず,悟天が落ち着くまで,頭をなで続けた。
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