preservation movement

かつてあったメタボリズム建築の保存運動

都城市民会館保存運動

都城市民会館はデザインの優れた大型建築作品であり、都城に残された最後の有名建築物でした。みんなが気付かないうちに、シンボルやランドマークになっていました。

これは昭和41年に菊竹清訓(きくたけ きよのり)氏の設計により建てられたもので、パリのポンピドーセンターにも模型が展示されました。 イタリアの高校美術の教科書にも写真が掲載され、 日本の建築専門誌でも『残したい建築物100選』のひとつとして紹介されました。また、建築家を志す人々が全国から見学に訪れ、個人ホームページの中にも、「私見では国宝級」などの賛辞が多数見受けられました。

しかし、その魅力的な建築物が市の財政改革の一環で、「古い・雨漏りする・維持費が掛かる」ということで2007年3月、『取り壊し』との市長決定が下りました。保存運動の甲斐あり南九州大学講堂として20年間の無償貸与が決まったものの、ついに2020年解体されました。

 

都城市民会館について

都城市民会館は市制40周年の記念事業として1966年に開館した文化施設です。1407席の大ホールのほか、2室の会議室や5室の楽屋ほかを備えていました。梁が放射状に突き出した特徴的なデザインは建築界でも注目されたものの、一方でコンクリートの劣化、鉄筋の腐食など老朽化が進み、舞台機構や設備機器も現代のニーズに対応できないなどの問題を抱えていました。

都城市民とのかかわり

利用者は年間12万人、開館からの累計利用者は440万人に上り、92年までには併設の結婚式場で4258組が挙式しました。各種発表会や文化祭、成人式、コンサートなどに活用されてきましたが、2006年・新文化ホールオープンの陰で、存続の危機を迎えました。

設計者・菊竹清訓氏について

1928年・福岡県久留米市生まれ/早稲田大学理工学部建築学科卒業/日本建築士会連合会名誉会長/2000年、「今世紀を創った世界建築家100人」に選ばれる。愛知万博総合プロデューサー。

沖縄海洋博<アクアポリス>・大阪万博<エキスポタワー>・江戸東京博物館・昭和館・出雲大社庁の舎・銀座テアトルビル・ソフィテル東京・シブヤ西部LOFT館・島根県立美術館・福岡市庁舎・九州国立博物館など作品多数。

メタボリズム<新陳代謝>

60年代に展開された日本初の国際的建築運動。「建築や都市は閉じた機械であってはならず、新陳代謝を通じて成長する有機体であらねばならない」という運動理念。リサイクルやエコロジーが叫ばれる近年、世界的にこのメタボリズムの再評価の気運が高まりつつあります。

都城市民会館は、メタボリズムを具現化した作品の好例として様々に紹介される特別な存在でした。

色彩計画:粟津 潔 氏

設計者のみに注目しがちですが、都城市民会館の色彩計画は世界的グラフィックデザイナー・粟津 潔 氏の手によるものだということが判りました。

1929年東京都目黒区生まれ。絵画・デザインを独自に学び、 1955年日本宣伝美術会展・日宣美賞受賞、1958年世界フィルムポスターコンペランス最優秀賞などを経て、1969年粟津デザイン研究室 <現 (有)粟津デザイン室>設立。

以降もグラフィックデザイナーとしてデザインの第一線で活躍する傍ら、建築・音楽・文学・映像など様々なジャンルを超えたアーティストらと共に都市設計・博覧会設計・映画制作なども行い、その活動・作品暦、及び発表は多岐に渡る。