Past days 2019

2019年某日の記憶の欠片

2019

Jan.19th.2019

自分は図面を描いただけの発注パーツ、そのごく一部。
作品を組んでしまえば全く見えなくなるモノだが、出来上がったそれは想像以上に美しかった。


それ自体が実を結ぶかは判らないものの、完成までに立ち止まらせる何かがふっと現れることがある。

 

 

Feb.25th.2019

九州コンテンポラリーアート 佐賀展、作品搬入。
展示計画は2転3転するが、そこはナマの作品が出会う場所だ。小さく収まる訳がない。
変更のスリルに肝を冷やすも、生き生きとした作家たちや刻々と変化する会場はやはり面白い。
このあたりはグループ展の難しさでもあるが、醍醐味でもある。

最終の重要パーツ、白い木球500個を作品に注ぐ。作品が動き出す。

 

 

Mar.31st.2019

新元号発表前最後の日曜日。昼食がてら霧島方面へ。咲き誇る桜を撮る。
…という内容で本日、日本中の各種SNSは溢れ返りまくることだろう。
しかしやるとも。今日はきっと正しくそういうことをする日なのだ。

足を延ばした嘉例川駅。古い木造でレトロな味わいだ。
観光大使・にゃん太郎氏のお休みに肩を落とし、地域の売店で見つけた巨大で超安価な筍に手を伸ばしつつも、下処理の苦労知らずと諭される。

地震に構えていたかと思えば、あるようでなかったユルい一日を有難く満喫する。そして明日から何かが変わる。

 

 

Apr.6th.2019

北海道の作家・小林重予さん回顧展。

貘と紺屋の2会場で充実の展示とあってはさすがに見逃す訳に行かず、
飛行機での日帰り往復で数時間を堪能、幾点かの小品を手にすることができた。
2会場共に素晴らしく、長いこと居座ったり何度も出入りしたりで去り難い。
大きな作品でもつくりは繊細で、視る度に新しい発見の扉が開かれる。

 可憐さ、不気味さ、はかなさ、力強い生命感、瑞々しさ、不可思議さ、毒気、清浄さ…どう言ったら良いのだろう。

小林作品の前の自分は希少なキノコいじめの衝動を持ちながら、取り返しのつかない光景に目を瞠る他ないコドモか。
そんなマズイ例えに辛うじて引っ掛けられるかも怪しい。


 作品の存在は作家の存在だ。倒れながらも創り続けた人達、自分もそちら側に加われるだろうか。

 

 

May.1st.2019

GWの東京。あちこちの美術館展示を堪能したが、メインの目的は金沢美大の新聞部OB会参加だ。

油絵科1年の数名で創刊したミニコミ誌「カスパー」。
書く愉しみに目覚めながらも大した目的意識を持てぬまま、軽薄な記事でお茶を濁していた。
疎遠になったり戻ったりと不誠実な部員であったが、それでも私に付き合ってくれた面々には感謝する他ない。

芸学女子2人組が立ち上げた新雑誌は「美大新報」。自分のものはともかく、他には骨太な記事が数多い。

特記すべきは当時の顧問・坪井秀人先生とメンバー・細田守氏の連載リレー小説「たまゆら」で、この会での持ち寄りにより30年ぶりに再び全貌を現した。知られざる初期作品として日の目を見るのか、それぞれの新作に力を与えるのか、いずれにしろ楽しみだ。


元年卒の自分に取り、平成は社会人キャリア・作家キャリアそのものの時代と言える。
その間知り得なかったそれぞれの暮らしぶり・仕事の裏話について語らうことは実に愉快で時間を忘れた。

 

 

June.1st.2019

熊本市現代美術館・大竹伸朗展。

かつて山塚アイとのFAX共作漫画「ドンケデリコ」にはド嵌りしたし、巨大作品の力技には思わず吹き出した。
ごちゃごちゃ感や独特のユーモア、大物量戦に圧倒されることを予想しつつの入室だったが、
得られたのはとにかく「描いている」という強い印象。

ニューペインティングの括りも平成も令和も関係ない。

彼はずっと描いている。

 

 

Jul.30th.2019

福岡個展準備進行中。
プランは前回の会期中既にあったが、元号が変わったその朝、妙に具体的で理に適った夢を見て飛び起き、制作変更を続けている。
通常は使えなかったり覚えていなかったりが当たり前、当てにすることではないのだが…

この色はやりなおし。夢がダメと言っている。

 

Aug.14th.2019

台風の合間を縫っての福岡。とはいえ、行きの飛行機は運休で急遽のバス旅。いつもは北九美を愉しむところだが、今回遠出は心配だ。

もともと最大の目当て、リニューアル後初の福岡市美をじっくり堪能する。
 自分の慣れ親しんできた、70年代テイストのあのつくりが失われた訳ではないことに安堵。
カフェやショップも良い感じで落ち着いている。オリジナルグッズも魅力的だ。
古壁もそれはそれで良かったが、新しい内装・構成の常設展示室は新鮮で不思議。
物量押しではなく、大きな作品をゆったりと楽しめるようになっていた展示も嬉しい。

 

Sep.23rd.2019

地獄が眼前にあることを示した具体物。

AB組んず解れつの面ファスナー6メートル。
随分切り分けたが、まだこんなに残っている…

しかし台風での大事からすると何が地獄かと叱られるか。

 

 

Oct.12th.2019

形骸をつくる

残滓をつくる

迷彩を追う

示せないものを指し示すために

 

Nov.26th.2019

福岡個展2日目。
開廊前の市美鑑賞
いつも行かないことが多い公園側に出てみて驚く。
藻は多いものの、水の澄む様子は氷面下か成層圏を覗くようだ。

暖かさとのギャップが不思議な、日頃の憂さを忘れるひととき。

 

 

Dec.1st.2019

個展中日。嬉しいなじみのご記帳。愉しい初めての会話。

 昨日はこうたくさん+斎藤さんコンビの掛け合いに笑い転げていた。
揃い踏みで来られることが多いお二人、汲めども尽きない話題には関心する他無い。
斎藤さんとは23年来のお付き合いというのに、同じ話のループを聞かない!

こういう歳の取り方ができないものだろうか。