Past days 2017

2017年某日の記憶の欠片

2017

Jan.2nd.2017

福岡より戻る。

前回訪れた時から、この街には様々な変化があった。

怪獣映画では度々蹂躙されてきた地ではあるが、それが現実となったかのような博多駅前の陥没。驚く他は無い。
ホームグラウンド、アートスペース貘の40周年。30周年展への参加が最近のことのようだ。
美美のマスター、森光さんが亡くなった。特別な一杯であったというのに。

ギャラリーおいしの閉廊。大学を出てすぐ、最初に連絡を取ったのがここ。結局、発表は成らなかったが、以来、天神で必ず立ち寄るスポットであり続けてきた。

有難う。お疲れ様。

5日から、宮崎県美でウラ仕事、年末には獏での新作個展。間にはグループショウも挟みそうだ。

忙しくなりそうな一年。

 

 

Feb.9th.2017

今年の県美展・絵画部門の審査員、同姓同名の人を知っているぞとボケていたら、まさしく本人、前田昌彦・金沢美術工芸大学学長だった。

宮崎大学の大泉先生つながりに納得したが、有難いことに私も昨晩の囲む会に御声掛けいただいた。
「オッサンになっててわからなかった」とはご挨拶だが、さもありなん。なんせ28年振りの再会の宴だ。

ところが想い出話に花が咲く訳でもなく、話題は「現在」のことに尽きる。

国画会。美術・美大と行政。美大生事情。そしてもちろん絵画について。
いや、それでこそ。それでいいのだと思う。先生、全く老けていないじゃないか。


ほどなく県美と宮崎大学の先生方が合流、会話はますます白熱するが、日付けが変わるあたりでお開きに。


愉しい夜だった。

 

 

Mar.14th.2017

今年もこの季節がやって来た。

真っ直ぐな反応と返しの面白さに乗せられて、次は何ができるだろうかという試行錯誤が楽しみな3年間だった。

年ごと贔屓目が働く訳ではないが、基本身勝手な自分さえ、他人に思いを巡らせることで心豊かになれるのだと教わった特別な時間だ。
彼等彼女等の人生に取り、アートがどのようなものであるかは判らないが、これからを生き抜く支えの小さなひとつとして在れば良いと思う。



有難う。元気で。

 

 

Apr.16th.2017

故あって『画歴』なるものを書くことになった。

もともと油彩表現を志した自分だが、インスタレーション制作に移行したことで、そう呼ばれるものは途絶えてしまったかのように見える。
それでも壁掛け可能で平面作品だとも言えそうなものはあり、その傾向で自分の発表歴を捉え直していくことはかなり新鮮な経験だった。
それが拡大解釈であろうとも、作品が気に掛けられ、新しい見方で再評価され、自分にお声を掛けていただけるということは本当に有難い。

 

May.7th.2017

GW恒例の福岡。さして時間が取れる訳でもなく、ギャラリー巡りは数軒に留まる。

貘での若手女性の二人展、よく描いていた。 とわーるではさかいようこさんに会う。
アルティアムではブラザーズ・クエイ!『失われた解剖模型のリハーサル』の主役の精緻な実物に興奮する。
帰りは大分廻り、もちろん市美とOPAMは外せない。
市美は森林の中にあり、緑の光がふんだんに入って気持ちが良い。

さて、OPAM。宇治山哲平はもちろん、高山辰雄の源氏物語シリーズの色彩にも見惚れる。吉村益信の黒い絵画は荒川修作の確信犯的なパロディか。ここにはまだまだ隠し玉がありそうだ。

最終日は都城。市美と版画家・黒木周さんが運営するギャラリーS.A.L。

作品・調度・器共々絶妙な色彩感覚が行き渡る。いただいたコーヒーをちょいと写すだけでもこのハマり具合だ。


心の栄養が摂れた。

June.25th.2017

ハカタカズヒロさんに発注していたユニットが本日納品。11月個展の中核を成す重要なものだが、イメージ通りの出来に満足。


発注する側は勝手なものでも、材料の特性はそれを100%許しはしない。以前石材加工の発注では、こちらのイメージと業界標準の仕上げとの間に大きなギャップがあり、モヤモヤしたものだが、ハカタさんは詳細な連絡が有難く、納得の仕上げとなった。 あとは自分の手仕事の精度を高めて擦り合わせるのみ。

しかしあのオーダーメイドなんて、もう一生やらないだろうな…

 

 

Jul.25th.2017

ハカタカズヒロさんに発注していたユニットは既に納品済み、あとは自分の仕事。

基本ユニットをとりあえず並べてみただけだが、この「とりあえず」の瞬間が新しい気付きを生む。

作品が動いている、という状態。

 

 

Aug.15th.2017

盆休みの福岡天神。

今年は市美・北九美・門司出光すべて改装中、ギャラリーは休廊。

貘のカウンターで「給食番長」よしながこうたくさんと話せたことが救い。
独特のキツさや不気味さを含みながらもユーモラスで親しみ易い作品は、大人にこそ楽しめる。
以前見た気になっていて真価を見逃しているものは、自分にもあるのかも知れない。

そう言えば、今回は絵本づいた旅だ。

アジ美恒例の絵本ミュージアム。アルティアムのTupera Tupera展。いずれの工夫も愉しい。

いつの間にか大名小学校が閉校しており、内部は建築事務所やカフェ、バーに改装されていた。
最近よくあることではあっても、見知った場所がいきなりというのは新鮮な驚きだ。

 

 

Sep.18th.2017

映画『人生フルーツ』を鹿児島で味わえた。

ガーデンズシネマはたった39席の映画館だが、この回は追加の椅子もぎっしりと並び、ほぼお年寄りでいっぱい。
いざ幕が上がると、作物の名だの、老夫婦に対する共感だのが声になって漏れ聞こえる。

そういうものは普段あまり有難く思うものではないが、この時の客席には大家族揃ってテレビを楽しんでいるかのような
和やかさが満ち、映像がぐっと滋味深く感じられた。

そうか。これは暮らしを味わい深く築いた人と、その繋がりの物語なのだ。

良い誕生日だった。ああ、最早ランチの筋張ったビーフさえ愛おしい。

 

 

Oct.15th.2017

霧島アートの森『ナムジュン・パイク展』。

彼の存在は、学生時代当時のアートシーンを語る上で抜きにはできない。
福井の展覧会で最大級の『TVガーデン』を観たこともよく覚えている。

ノスタルジー含みの評価は避けられないが、彼は当時の最先端を走っていただけではなく、
社会性や民俗性を意識した、地に足の付いた表現を続けていたことが分かる。
学生時代は余計なもののようにさえ思えていたが、その視座故、彼は一介のメディア・アーティストとして埋もれることがなかったのか。

時代の技術と共にあるアート/アーティストが残っていく難しさを改めて感じた。

 

 

Nov.27th.2017

貘・2年振りの個展初日。またこの席に座れた。

暖かい11月。自分の生きる悩みを作品化すること自体が既に難産を意味するのは当然のこと、今回はその難産に集中できた意味で順調だ。

搬入日には魔物が居座る。それは今回も例外ではなかったが、手助けも有難く、泣きを見ずに済んだ。
体を成しても完成ではなく、それに対峙して考えることで作品が始まる。


会期中に何が掴めるだろうか。

 

 

Dec.13th.2017

この個展会期中は大小様々、印象深い出来事が重なった。
メインユニットの重量トラブル。川上さんの小さな宝箱のような画廊初訪問。敬愛する小林重予さんの訃報。
こうたくさん、安藤さんとの愉快な話。齋藤さん、坂井さんとも話せた。作品と共に生きる人達の言葉は頼もしい。
外国人観光客のオーダーを、さらりと解決して仕事に出る津田さん。20分弱のドラマを観ているようだった。
元村さんにはお会いできなかったが、勿体無いくらいの評価を頂いた。

搬出には応援団が集合。原田さん親子のやりとりは愉しくも頼もしい。長友さんにも随分骨を折らせた。
毎回ながら小田さん夫妻の心遣いには感謝しかない。


これから相応の作品で応えなければ。