Past days 2006

2006年某日の記憶の欠片

2006

Jan.15th.2006

急勾配の麓で呼ぶ躊躇、頼りない右足の感触。いきなり拡がる荒涼とした異形の光景に暫し呆然とする。

 

奪われるバランス。天球儀の怪しい光。

 

成程、これは主を失った異星の船だ。
映画館でも外の出来事を気にする性分、足早に去るのは尚更か。

 

 

空想の降り立つ場・鹿児島輝北天球館。
車の調子と時間が許せばまたいずれ。

 

 

Feb.26th.2006

熊本現代美術館・Ann Hamilton展。

 

言語以前の言語の体得。自由になることの難しさと可能性へのとまどい。

 

暴力的な程にシンプルな表現に虚を突かれ、言葉を失う。
そこから紡ぎ出すべきものは何なのか。

 

 

幼少期にこのような体験を重ねた子供が夢想する未来とは、どのようなものなのだろうね。

 

 

Mar.19th.2006

春の宮崎個展の終了。

 

あれほど切望しておきながら逃してしまった対話の時間。
作品の状況が悪くなかっただけに尚更悔やまれる。

 

この地でアーティストたることの難しさから来た失調。
それを修復する行為すら易くはいかないのだろうか?

 

憂鬱な春の日没。

 

それでも風は温む。

 

 

May.4th.2006

忙殺された四月の憂鬱が握らせた切符。
福岡の旅はこの時期恒例だが、自分の庭と言うにはまだ傲慢に過ぎた。

 

 

人生で一番、というモノが更新される楽しさ。

 

そこは狭いながらも自信と敬愛で守られ続ける場所。
引きも切らない客は至福の一杯の後、静かに席を譲る。

 

洗練された職人の所作は儀式に似るが、尚見飽きる事がない。

 

口に出してしまいたい秘密。

 

 

自分でもこんな時間や空間が創れないものだろうか。

 

 

June.25th.2006

雷雨のち快晴・ときどき雨。
ワールドカップ熱にうんざりの男は飛行場への逃避行。

 

 

小奇麗に開けた空間で味わう彫刻の小品と暫しの旅愁。

 

このままゲートを潜って違う空を見たい、という叶わぬ願い。

 

 

もう夏だ。

 

 

July.29th.2006

光明禅寺の美しい夏。
四季を自在に切り取る驚異の中庭。

 

 

瑞々しい静寂が僕らをひとりにする。

 

 

Aug.9th.2006

長崎県美術館。奇しくもここが地獄になった日。
新しく涼しい部屋で異国のデジタルアートを楽しむ。

 

かつて切望された理想の世界、そこに生きていると胸を張れるのか?

 

セミの声 街宣車 港の遠景

 

冷えたグラスがからんと鳴る。

 

 

Sep.18th.2006

41回目の誕生日。元気を分けてもらいに、と誘われた霧島アートの森。
子供たちのパンチが生み出す躍動的なシェイプ。

 

その事件(ワークショップ)の首謀者、篠原有司男。

 

気圧(けお)される自分に手渡された本に、あれよと言う間に走る線。
カフェでの談笑。溢れる明るさ、澱み無さ。自然な気配り。
近付くと殺られる程のエネルギーを放つ作品の創造主は優しい目の持ち主だった。

 

 

「進むしかないよ」と、本日のプレゼンター。
ありがとう。でも齢74であのパワーは持てないだろうな。

 

 

(画像は篠原有司男の筆による光野浩一像)

 

 

Oct.15th.2006

10年。

 

 

だからこその欲張りが頭を擡げるアートストリート。

 

恐らくはメンバー全ての想いだったろうが、遊び心と軽いフットワークが身上の一団。
秋空の下、ひたすら冴える悪戯描きと笑い声。

 

鬱。HP開設。MESSAGE \'97。貘の企画作家入り。板橋区美での企画。大事な人々との出会い、またはその伏線。

 

確かに10年前、確かなターニング・ポイントが訪れ、多くの事が変化した。

 

10年後の自分を夢想する無意味。敢えて耽ってみたくなる今日。

 

 

Nov.4th.2006

貘での個展。

 

 

自分の性分は賜物と言って呉れた人が居る。

 

時に自ら望んでそうするかのように悩む自分。そこから抜け出したい自分。

 

関わりの苦痛が人間の幅広さを示すものと慶べるように
「起こったことはすべて良い事」と思えるようになれるだろうか。

 

 

天神はひと足早いクリスマス。
この祝福の光は自分にも注ぐのか。

 

 

Dec.24th.2006

貘のクリスマス。いつもと違う華やいだ雰囲気に杯を重ねる。

 

 

特に好みな訳でもないが、こういう時にはブルースと縁があるようだ。

 

冷えた金沢の空気を照らす裸電球の下、ギターを爪弾くMやTの姿が重なる。
(自分はどうにか続けてこれたよ。多分これからもそうだろう。)

 

 

小箱ひとつとリボンを買い、コートの下で温める。