光野浩一、某日の記憶のかけら。月一回、一日分のみ掲載。
Oct.6th.2007
福岡・貘。
いかにも博多っ子、といった軽妙な語り口の老紳士が突如、声を詰まらす。
病床にあった友人が昨日、亡くなったという。
人はどうせ死ぬ。必ず死ぬ。
だが、それでもなぜ人は思い遣りを捨てはしないのか。
それが寂しい。そして嬉しいのだと。
眼の前に置かれたグラスに泡が立つ。
この場所に起こる出会いの奇跡。それが私に生きろと言う。