WEBCLAP LOG - コスプレ


01 * 赤福

「俺も見せたんだから福士くんもちゃんと見せてよ!」
「なっ、ていうかオマエが勝手に見せたんだろうが!」
「なんで見せてくれない訳?って、あぁ! もしかして見せられないような格好したんじゃないよね!?」
「ば、馬鹿かっ俺は普通にチャイナドレスだってーの!」
言い切った途端、福士くんは我に返ったようで自分の口をがばっと抑えた。
うん、気持ちはわかるけど。
もう遅いよ?
じりじりと詰め寄っていくと福士くんは泣きそうな顔で真っ赤になってた。
「見せて」
短く言葉にすると、ふるふると首を左右に振られてしまった。
ホント・・・福士くんて懲りないよね。
そんなのが俺に通用しないとわかってて、毎回駄々をこねるんだから。
息がかかるくらい傍まで行くと目線を合わせて、とっときの極上の微笑みを見せる。その俺の笑顔にぴくりと反応した福士くんは観念したのか、舌打ちしかねない表情で背中に隠してた写真を引っ張り出した。
ほらと渡されたそれを引っ手繰るようにして見る。
角を持った震える両手が自分でも情けないがこの際、見てみぬ振りで。
「うわー・・・」
なんかもう絶句?
写真の中で明るい色をした綺麗な赤地のチャイナドレスを着た福士くんが照れ臭そうに微笑んでいた。伸びた髪は後ろでまとめて牡丹の花を飾りに。白く細い足が太腿のぎりぎりの位置まで見えるスリットから覗いていて。
しかも!
その見えた足首から膝の真ん中あたりまで入れられた龍のタトゥー。
息を飲んだ俺に気づかない福士くんは先程、俺が見せた学祭でのギャルソン姿の写真を熱心に見入っていた。
ふと俺の視線に気づいた福士くんと目が合う。
「あ、あのさ。この写真、俺もらってもいい?」
真っ赤な顔で恥ずかしそうにそう訊かれて。
承諾の代わりに押し倒したのは、半分は福士くんのせいだからね?





02 * 亜南

「いやーやっぱさ、その格好だったら髪は下ろしてたまんまの方がいいと俺は思うけど?」
「そうだな。おれもそっちのがイイと思うぞ?」
いつの間にか入り込んできた千石と東方がしたり顔で頷いた。
二人に言われて、亜久津も渋々と立てようとしてた髪から手を離した。
それでも「チッ」と舌打ちするのを忘れないのが亜久津の亜久津たる所以だろうと思う。
「やっぱ、そうだよなぁ?つーかさ、髪立てちゃうと軍帽が被れないし」
「・・・・・・・・・・・・」
「それはそうだねぇ」
「南も今回は髪下ろしたまんまなんだろう?なら条件は同じなんだし」
東方がそう続けてくれて、ほらと差し出した軍帽を手に取ると亜久津はもう一度舌打ちしてくれた。
それって『了解』ってことだろ?
にこやかに相槌をうってくれた千石と目が合うとウインクが返って来た。
後でどうこう言われようともコレだけは譲れない。
そんな俺の気持ちをわかってくれたのかな、なんて思って。俺もこっそり千石に肩を竦めてみせた。
異様に教室中や廊下からも視線を集めてるのは気のせいじゃない。
それもその筈。
千石と東方は対を成すような鮮やかな刺繍の入った直衣姿。いわゆる「陰陽師」なんかがしてるあの格好で。
そう言う俺と亜久津もどこの国のモンだと考えちゃうようなかっちりとした軍服姿だったりする訳で。すらりとした肢体を持つ亜久津のその姿は正面から見れないほどのカッコ良さだ。
しかも2人していつもは立ててる髪を下ろしてるとなれば人目を引いても可笑しくないのかも知れない。(ちなみに千石はいつも通りの頭だけど東方の髪は後ろで結ばれてる。初めて見た!)
動くたびに細い銀髪が揺れたり、身体のラインがわかる軍服の様は後で何されても構わないからそのまんまで!と言いたくなるのだ。
着替えの途中、ムラッと来たという千石の言い分も頷ける。
「で、それ特注か?」
「ああ、らしいな。ご苦労なことで」
「身長もそうだが、おまえのそれは股下分もあるからだろ?」
「後でさー東方のとあっくんの交換してみない?」
「あ、それ俺も見てみたい」
思わず洩れた本音に振り返った亜久津の気がゆらりと揺れた気がした。
もしかして、俺。
自分で地雷踏んじゃった?





03 * 東千

「南たちのクラスのもポイント高いんだけど。東方だったら、やっぱりコレだと思うんだよね!」
「・・・いや、着るのは構わないけどな」
「うん?」
「俺のサイズであるのか、それ。亜久津のは特注なんだろう?」
「大丈夫!ちゃんと東方のも特注してもらったから!」
はい、とにっこり笑顔で千石から差し出されたのは鮮やかな朱色の生地に金銀刺繍の施された煌びやかな直衣。
確かに誂えたというのは本当らしく、恐ろしく馬鹿でかい。
ふぅと溜め息をつくとおもむろに手を伸ばす。
それと同時に、あれやこれやと渡され、終いにはありとあらゆる小物まで出てくる始末。ひくりとこめかみに青筋を浮かべかけた東方だったが。
「やっぱりねぇ東方って黒一色っていうイメージだからさ。でも、こういう派手目っぽい衣装も似会うと思うんだよね」
「・・・・・・おまえも似合ってる」
東方の振り向いた先。
オレンジの髪はそのままに漆黒地に金銀の刺繍が入った直衣を身に付けた千石の姿がそこに。
細い首筋が際立って見える黒の着物に思わず、こくりと息を飲む。
「・・・・・・これ、着るのも楽しいけどさ」
「けど?」
「脱がすのも楽しそうじゃない?」
目が合うと艶やかに微笑まれて。
そのまま東方が鍵を閉めに行ったのは言うまでもない。





04 * ジャブン

「・・・・・・おまえ、似合いすぎ」
ジャッカルの呆れたような呟きに振り返る。
動く拍子にフリルの重なったスカートが太腿に当たってくすぐったい。
「おージャッカルだって似合ってんじゃん」
「いや、俺のはまだ普通だろ」
「うん?でもジャッカルって、身体のバランスが絶妙だからさー」
「だから、なんだよ?」
言葉をあえて切った俺にジャッカルの視線が向く。
真っ白なシャツに黒いギャルソンエプロン姿。
すっきりとイイ感じに筋肉のついたジャッカルの身体は、誰に言うでもないが密かな俺の自慢だったりする。
反対に俺の格好はと言えば、これまた人目を引くであろうウェイトレスのふりふりの超短いスカート。
どう見ても、そういう意味でのメイド服にしか見えないんだけど、用意した柳生は断じて違います!と言ってた代物。
それに加えて、少し高めのヒールは歩きにくいがしょうがない。何て言ったってこの日のためにダイエットしようかと思ったくらいなんだから。(いやまぁ思っただけで実行には移さなかったんだけど)
「喰いたくならねぇ?」
「あぁ?」
とことこ近寄っていくと、わざと背伸びしてジャッカルの首に腕を回す。
そのまま首を傾げる仕草で顔を覗き込む。
怪訝そうな顔をしたジャッカルだったけれど、条件反射というか何というか。当然のように俺の腰あたりに回されたジャッカルの腕。
そうして回して気づいたらしい、俺のスカートの短さ。
視線が絡むと、くくっと咽喉の奥で笑いやがった。
「ブン太?」
「何」
「ちなみにこのスカートの下ってどうなってるんだ?」
「それは」
「それは?」
わかりきったこと言わせるつもりかよ?そうは思ったけれど。
回していた腕に力を込めるとジャッカルの耳に口唇を寄せて、囁いた。
「自分で確かめてみろぃ」