プ ラ イ ド


かなわないな、といつも思う。
「観月は変なとこでプライド高いよな」
赤澤がくすりと笑って、そう言うことがある。
確かに僕のプライドは低くはない。
目に見えて測れるものでもないから、はっきりとした事は判らないけれど。
他人を見ていて「何故」と思うことも多々あるからそういう事なんだと思う。
僕は。
信頼をこめた視線で見つめ、後ろに控えられる訳でもなく。
にこりと笑い絆を感じさせられるように悠然と横にならぶ訳でもなく。
大喧嘩さえも愛情の確認だとまだ言い切れる訳でもない。
そういった風に、目に見えて仲のいい人達を見てると気にならないわけじゃないけれど。
僕はこの人に『好きだ』と言えない。
でも赤澤は、ここぞという時に限らず僕にその言葉をてらいもなく、くれる。
赤澤にそう言われると僕も言わなくちゃ、という気にはなるけれど、どうしても僕にはその言葉が言えない。
そういう時、そのもどかしさが顔に出るのか赤澤が苦笑まじりに肩をすくめて見せる。
「・・・赤澤はそういうことを口にして恥ずかしくないんですか?」
思わず、そう質問を口に出した時。
赤澤が『しょーがねぇなー』といった顔で笑って、僕と視線があうように膝を落とすとおもむろに口を開いた。
「俺は『負けていい相手』を知ってるんだよ」
それに、と続けて。
「俺には観月が俺のこと好きだってわかってるから、無理すんな」
この人は僕の欲しい言葉をくれる。
ありがとうございます。
その言葉さえも素直に口に出来ないのに赤澤はわかってるからとただ笑うだけだ。
『大好きです』
そう心の中で思った瞬間、赤澤が僕の髪に指をからめて呟いた。
「――・・・サンキュ」
普段とは違う、静かな顔で幸せそうに笑ってそう言うから。
かなわないな、とホントにいつも思う。