いちばんそばに

「ジャッカルってさ結構、赤也のことスキだろ」
「・・・・・・あのな」
今どういう状態かわかってて、それ言ってんのか。
はぁと大きく息を吐いたジャッカルがブン太を見た。こめかみから流れる汗を指でなぞるとくすぐったそうに身を捩らせる。
「んーこういう状態だから思い出したっつーか」
真似て、同じように首筋を伝う汗を指で弾くとジャッカルの首にキスを落とす。
温まったというか、すでに熱いレベルにまで達している身体には更に熱を上げるものでしかなくて。
互いの腰を襲った、ぞわりとしたものを感じてくくっと笑う。
密着した肌から笑う振動が伝わってきて何やらむず痒い。
裸のジャッカルの上に乗っかったブン太も裸で。
自身を咥え込んだ状態で思いもしなかった事を言われ、ジャッカルは苦笑するしかない。
「大体なんでそんな事」
「こうやって近くで見てたらさ」
「あぁ?」
「ジャッカルって人見知りっていうか、自分の領域に人が入るのって意外と嫌がるほうじゃん?なのに赤也とかって結構そばに居座らせたりしてるから、そうなんだろーなって」
「ふぅん?」
俯きかげんに喋るブン太を見やって少しだけ腰を揺する。
その振動にはぁっと掠れた息を吐いたブン太の様子にジャッカルが口の端に笑みを浮かべて顔を覗き込んだ。
そんなかすかな動きでも繋がりは深くなったようで背中を震わせたブン太の眉根が寄って、益々ジャッカルは笑みを大きくする。
腰の両脇に添えていた手をずらすと双丘から背中へと撫で上げた。
「っや、あ」
短く洩れた声に降下しかけてた機嫌が上向きになった。
単純だよなと自分でも思ったが、自分を感じてくれるのはやっぱり嬉しい。
ジャッカルはしがみついて来たブン太の頭を撫でると後頭部を掴み強引に口唇を合わせた。
ちゅっとわざと音をさせて離れる。互いの間を繋ぐ糸をブン太がとろんとした目で見た。そ
の表情を見たジャッカルは頭を掴む手はそのままに開いていた腕をブン太の腰に回すと思いっきり突き上げた。
「・・・っあ・・・・・・ん!」
「ったく。シテる最中に余裕だな、おまえは」
「・・・だって」
「ああ?」
話をしてる間も動きは止まることなく。
深くなる繋がりにブン太の手がもがくようにジャッカルの背中を彷徨う。
自分にしがみついたブン太にジャッカルの口に笑みが浮かぶ。
普段わりと「俺様」な性格のブン太がこの時ばかりはジャッカルの腕の中で大人しくなる。
いじめたい訳じゃないが、こうも自分の手の上で踊ってくれるとなると多少意趣返ししたくなるのも当然。
ぎりぎり息継ぎできる程度に突き上げ続けるとブン太の息が絶え絶えになった。
しがみついたジャッカルの首筋に顔を埋めた状態のブン太が時折、うわ言のように「・・・だって」「・・・だって」と呟いていて。
そういやさっきも何か言いかけてたな、と思い出したジャッカルは荒い息を吐くブン太の背中を撫でてやった。
「だって、なんだ?」
「・・・・・・だって・・・・・・」
「?」
熱に浮かされたブン太の焦点の合わない瞳と目が合う。
落ち着く気配のない荒い息がジャッカルの首筋を撫でた。
生理的なものだとわかっているのに潤んだ瞳を見ていたら、たまらなくなって塞ぐように口付けていた。
キスの合間にもブン太の呟きは止まらない。
いったん口唇を離したジャッカルがブン太を覗き込んだ。
「なんだ?」
「・・・・・・頭ではわかってても、やっぱ腹立つじゃん」
「何が」
「おまえの一番そばにいるのは俺なの!」
「って、赤也は好きなヤツいるんだろ?」
なら問題ないじゃないかというジャッカルにブン太が腹立たしそうな目を向けた。
やっと息を吐き出すようにして喋るブン太は辛そうで苦笑したジャッカルは汗が流れる頬を優しく撫でた。
その掌の感触を楽しむようにブン太が小さく笑いを浮かべて目を閉じる。
ふとブン太の手がジャッカルのものに重なって。
「・・・・・・だからさ。おまえと赤也との間には何もないってわかってても話してたりして楽しそうだったりすると口惜しいんだよ」
ジャッカルの手にちゅうっとキスしてブン太が苦笑した。
「不安なのか?」
「そうじゃない。ただ面白くねーんだよ」
「・・・・・・そっか。なら」
「あ?」
にやりと笑ったジャッカルに怪訝そうな視線をブン太が向ける。
嫌な予感がして本能的に身体を離そうとしたが遅かった。片手は重ねたまま空いたほうの手が腰に添えられて。
「くだらない事考える暇もないほど愛してやるよ」
追い込みをかけられるように突き上げられた。
今まで以上の快楽の波がブン太を襲う。
溢れた涙にジャッカルの口唇が寄るとぽろぽろ零れるそれを吸い取っていく。
「おまえは知らないかもしれないが、俺はな、おまえが一番そばにいると思ってんだ」
耳元で囁かれた言葉にブン太は抱きついた。
そのブン太の答えにジャッカルが笑う。振動にブン太が益々抱きついた。
「俺がこんなになるのはおまえだけなんだから」
ふとこぼれたその言葉にブン太は熱が破裂するのを感じた。