福岡市・アートスペース貘では2年ぶりの個展です。出品作は、インスタレーション『這う者の翼/飛ぶ者の枷』1点。
これまで続けてきたフロッピー・ディスクのシリーズに終止符を打ち、新しいモチーフにチェス盤を登場させました。


光野浩一展

『這う者の翼/飛ぶ者の枷』

(はうもののつばさ/とぶもののかせ)


2002.11.25〜12.8 福岡市・アートスペース貘



INSTALLATION 『這う者の翼/飛ぶ者の枷』

 


roll over imageは室内配置図。




 

室内の大部分を巨大なチェス盤が占める。
ひとマスのサイズは正式競技用チェス盤と同じ。それを可能な限り増やして盤面を構成。

チェス駒についても同様に正式競技用のもの。通常よりはるかに多数の駒が載っている。

     
 

通常は白・黒に分かれた2者が対峙し、多くの種類の駒を操ってゲームを進めるが、ここにある駒はすべてキングのみ。注視すると、そのすべてが微妙に色違いのグレーであることがわかる。

王冠の飾りは墓標に似る。

     
  天井からは空を写したカラーのライトボックスがぶら下がる。
     
  壁面にはビル街を写したモノクロームのライトボックス。
     
  足元には街の石畳を写したモノクロームのライトボックス。自分が立つギャラリー床材もまた正方形タイルであることが意識される。
     
 

室内はライトボックスがはっきりと意識できる程度にほの暗い。
(光源の特性上、このページの画像では均一な感じが出ていません。)

  入り口壁面にルールの提示。観客はこれに従って駒を進めることができる。

 

   ・自分の駒を見つけること。

   ・他人の駒を動かすことはできない。

   ・行為を遡ることはできない。




『這う者の翼/飛ぶ者の枷』

自らの位置付けを確認しつつ、世界の成り立ちを探るために利用できるモデル。
他者の介入で変化する、不確定な要素を孕む世界の縮図。

そんなものを前に考えてみたいと思い、この作品を制作しました。

タイトルはキリンジ『地を這う者に翼は要らぬ』から。ただし私に歌詞の内容ほどの強さはあろうはずもなく、そのままの引用はしませんでした。

基本的には交流分析の考え方を色濃く投影したものになっていますが、理論を知らなくとも鑑賞は十分可能でしょう。
これまでの作品の中心には『I.』がありましたが、ここにはありません。その確立の難しさを改めて感じるとともに、自分の身の回りにももっと目を向け、受け入れていきたいと願ったことの顕れです。