ART STREET 2005


9年目のアートストリート。
次回10周年は来年完成の総合文化ホールが舞台となって新しいスタートを切ります。ところがその陰で市のランドマーク・都城市民会館の取り壊しがいよいよ現実味を帯び始めたのが今年。ときわ通り商店街ならびにM・A・Pは、その保存に関する問題提起や呼びかけを行うべく、そして他にもあるこの地の古く魅力あるものを再発見すべく、『温故知新』をテーマに据えました。

自分たちの活動の場だけを問題にせず、都城の文化全体を視野に入れた今回はM・A・Pの底力を見た思いがします。ひとつの想いが周囲を衝き動かし、大きな力となっていく様は、アートの持つ力、続ける勇気を信じて良いのだと再確認するに十分でした。

講演会のゲストは都城市民会館の設計からメンテナンスに至るまで深く関わった元・菊竹清訓建築事務所所属(現・遠藤勝勧建築事務所主催)遠藤勝勧氏。『菊竹清訓の右腕』の異名を持つ方の登場に、会場は建築関係者で沸きました。建築設計の信頼性が大きく揺らぎ、世間が騒然となったこの年末でしたが、それとは対照的な熱い情熱が感じられる内容でした。当時の緞帳組みを手伝ったというときわ通りのメンバーも現れ、図らずも同窓会ムードが醸し出されていました。


遠藤勝勧氏による講演。熱く、詳しく、そして懐かしい、『建築のプロ、かくあるべし』という話が判り易く展開されました。

私達が慣れ親しんできた市民会館はこのような人々の情熱の賜物なのです。

 

耐震強度偽造問題により建築に関わる人間の信用のみならず、住む人の生命・財産が脅かされたこの年末、実に頼もしく心に響く内容でした。


ときわ通り界隈の展示は一般参加こそ少なかったものの、M・A・Pメンバーの円熟した表現が目を引きました。学校ごとの参加には減りつつある授業時間数も影を落とす状況が見え隠れします。今後は、今までにこのイベントに関わり、巣立って行った人々・その周囲にいた人々も楽しめる内容の工夫や呼びかけが必要となってくるように思います。

今回のM・A・P屋外制作は街路樹根元から生えたハート。

木々の窓から様々な顔がメッセージを送ります。

織りの展示も年々趣向を変えて花開きます。

透明な箱にハート詰め合わせ。シーズンですね。

ワインのコルク、日付け添え。煙草バージョンもあり。

見過ごしがちなこの地の面白いモノ、大集合。

輝くボタンと滴たち。かえりみち。

旅の想い出を彩る組作品。

作られて百年という貴重な作品も登場。

市民会館の見方を再構築。眼差しのメタボリズム。

花と花瓶三態。フレームとイリュージョン。

今年も元気が溢れた子供達のベニヤアート。

 


光野浩一参加作品:<SOUND METABOLISM>

(ROLL OVER IMAGEは改修前の状態。)

個人の趣味的にはヴィンテージ・キーボードを愛して止まない私ですが、今回のテーマは通常の制作内容よりもそちらにリンクしていると考え、敢えてデザインと作業の中でメタボリズムを感じようと努めました。

古い電子オルガンの中でも、コンボ・オルガンは未だに高値で取り引きされ、現代のサウンドの中で生きているのですが、キャビネットタイプのものは今やお荷物にしかなっていないようです。特に、70年代〜80年代前半の国産機はシンセサイザーやPCM音源にはない魅力があっても輸送費のみでオークションに出される始末です。扱いの面から考えると、件の市民会館に通じるものがないでしょうか。

「電気系統を変えなければ結線を延長しても機能する。好みのデザインにできる。」ということに着目し、あえて70年代のキャビネット・オルガンを改修したのがこの作品です。

 

洒落たパステルカラーのノブ、これを生かすデザインを生み出すことがメタボリズムの体言になると考えました。

それに対しフットペダル上面のボタンは、現代的なサウンドエフェクトを呼び出せるよう追加。

ワンダレイ風からロック・オルガンまでをカバーする。

地域住民との触れ合いで生きるこの作品の魅力を引き出すには、ミニコンサートなどを企画したり、実際に触れて音出しをしてもらったりすることが望ましかったのですが、様々な制約があって実現できず、スタンドを欠いた展示となりました。次回には実現したいところです。

(完全な状態)

*各作品画像の著作権は制作者各人にあります。詳細ならびにこれ以外の作品につきましては、ときわ通り商店街ホームページをご覧下さい。


ARTSTREET M.A.P