福岡市・アートスペース貘では2年ぶりの個展です。出品作は、インスタレーション『箱庭療法』1点。
チェス盤をモチーフとした作品展開も定着の観があり、様々な方々との有意義な出会いがありました。


光野浩一展

『箱庭療法』

2004.11.1〜14 福岡市・アートスペース貘



INSTALLATION  『箱庭療法』



(roll over imageは室内設置図)



室内中央に白いテーブル。上にはブルー系のチェス盤様の箱が載る。
ひとマスのサイズは正式競技用チェス盤と同じ。

箱は実際に箱庭療法で使用するものの4倍大。上方を傘つきの白熱灯が照らしている。

通常の箱庭療法で使用の箱は、内部が青く塗られ、中に敷かれた砂を体験者が動かすことにより海や川などを表現できるようになっている。

この作品中の箱では、内部はブルー系の仕上がりになっているが、砂に代わって塩が敷かれている。

通常の箱庭療法では、人形や建物、動植物ほか様々なミニチュアが豊富に用意され、体験者が自由に箱の内部に配置することができるようになっている。

 

この作品中では、4段からなる棚が、すべて異なる階調のグレーで塗られたキング駒で埋め尽くされている。

駒はすべて公式競技用のものである。

また、棚の上には個人の生活を参照する、短文の入った5つのガラス枠も配置される。

 “Street”

 “Around the desk”

 “Scenery from windows”

 “Portrait of family”

 “The other side of door”

床材は白黒の正方形タイルを組んだもので、チェス盤の形状を成す。

ひとマスは『成人ひとりが無理なく中に立てるサイズ』を意識して作られている。

室内は蛍光灯による白くフラットな明るさ。

入り口壁面に実際のセラピーとしての箱庭療法についての説明文がある。

 

 

 



『箱庭療法』

自らの認識している世界の成り立ちを確認するために利用できるモデル。
しかしそれも異なる自己(=他者)の介入で変化を繰り返し、混沌とした状況の中に取り込まれていく。

誰もが生きる証を求め続ける。相互干渉と埋没。とても当たり前のこと。言うまでもないこと。

不毛と嗤うのは易いが、社会の縮図を前にして『それでも生きる私』を明らかにしたい。 制作を支えたのはそんな想いです。

箱庭療法をモチーフにしたのは2000年の『ひどく遠い天国』に次いで2回目。トリプルイメージから成る『ひどく遠い天国』は難解に過ぎた観があり、いつかもっと練ったものを出したかったと思っていました。それはなんとか伝わる形にできたようです。

このギャラリーでの展示を長年観ている観客のお一人に『何もない時よりずっと広く感じます』と言われました。
実際にはこれまでの作品の中でも最重量級なのですが、搬出を終えてみて自分でも本当にそう感じたのでした。