宮崎市・ウインドファームでは2年ぶりの個展です。出品作は、インスタレーション『ロールプレイング』1点ならびに100点限定マルチプル『LINKS』。
出品点数を絞り、鑑賞者教育を視野に入れた展示を行いました。


光野浩一展

『ロールプレイング』

2006.3.6〜19 宮崎市・ギャラリー ウインドファーム



INSTALLATION  『ロールプレイング』





室内向かいの壁面いっぱいに段違いの白い棚を設置。格子状の構造は建築物/都市を暗示する。

棚は、すべて異なる階調のグレーで塗られたキング駒で埋め尽くされており、それらが壁面に影を落とす。

駒はすべて公式競技用のものである。

床面は大人ひとりが楽に立てる大きさのマスからなる巨大なチェス盤になっている。

観客はその上に立ち、チェス駒を参照して自分の人間関係を考えるよう指示される。

 

MULTIPLES  『LINKS』

100個限定で制作したストラップ状マルチプル。ビニールチューブに『LINK』と表記(裏面には当サイトのアドレスをデザイン)したタグと、草の種子を封入し、エディションをつけたもの。会期中作家と対話またはメールで感想を送った観客に「LINKを結んだ」として配布する。

封入した種子はハーブのもの。雑草/有用性のある植物の両義性・可能性を掛ける。

(roll over imageは単体detail)

 


ここ数年の宮崎県内の展示では、作品の盗難・破壊など、鑑賞者の現代美術に対する誤解や鑑賞モラルの欠如を思い知る結果に。

ただし、その事実に憤るのみでは事態の好転は望めないと考え、(特に初心者の)鑑賞者を教育・育成するための展示を行いました。

会場入口の衝立に始まり、「インスタレーションとは」「マルチプルとは」の初心者向けの解説や、北九州市立美術館で配布の「マナーカード」の設置を行いました。

(roll over imageで一部拡大)



『ロールプレイング』

日常の再構成と再認識。自分の認識している世界の成り立ちを確認するために利用できるモデル。また、その中の他者として世界を見直すことができるモデル。 他方、作家である私にとってこの展覧会は『アートを生み出す者』と『それを取り巻く社会=宮崎』の関係を探るロールプレイングの意味も持っています。

長い間、福岡市を中心に発表を続けてきた私ですが、近年久々に発表した宮崎市で大きな衝撃を受けます。観客の鑑賞マナーが定着しておらず、作品の破壊や盗難が相次いだのです。それはギャラリー/美術館の別を問いませんでした。この事実は私を打ちのめすに十分でしたが、同時に「宮崎にアートを根付かせるため、自分は何をやってきたのか」「たとえ(アートにとり)劣悪な環境であろうとも、宮崎こそが自分の生きている世界ではないか」という自己反省を導くことにもなったのです。

会期中配布のマルチプル作品「LINK」。初心者の鑑賞を意識した会場づくり。それは、関わりの失望を再び願いに変えようとする決意の表現でもあります。

諸事情により、会期中は会場に詰められず、当初予定していた観客との直接対話は実現しませんでしたが、心配していた作品の破損はありませんでした。私の願いは届いたのでしょうか。