2004/7/24.25 大分 アートの旅


以下の文章は、地元都城市立美術館の連絡協力会・MCMA CLUB会報第3号のために寄稿し、掲載された紀行文です。

(実のところ、M.A.Pの旅、この行間の纏まっていない部分にこそサイド・ストーリーがあるのです。「ちょっと目を離すとすぐ居なくなるオトナたち」恐るべし。いや、コドモにも徘徊老人にも随分間があるのですが。このあたりはまた。)

 

『アート探訪・夏の大分編』

 

 駅弁の不備も列車トラブルも大雨もなんのその。この夏、アート好きの仲間たちと出掛けた大分アート探訪の旅。以下、そのポイントを振り返ってみる。

 府内城西隣の巨大なアートプラザ。建築家・磯崎新の設計により県立図書館として建てられたものが、新築移転に伴い、現在のように活用されている。大分出身である彼の記念館の様相を呈する上階は、数々のコンペを勝ち抜いてきた巨大で緻密な模型群がひしめく。下のフロアでは、吉野辰海の巨大な犬の彫刻が十字架を象る。この階は「読売アンデパンダン」ならびに「ネオダダ」関連の作品が立ち並ぶ。実はここ大分は、これら美術運動における重要な作家達の出身県であり、関連企画も多い。日本の現代美術が最も熱かったこの時代の魅力に触れたい向きには、『老人力』でお馴染み、メンバーでもあった赤瀬川原平の著作がお薦め。(『反芸術アンパン』『東京ミキサー計画』など。)ハマること受け合いである。

 上野丘公園内の大分市立美術館。多くの中高生が自習する姿を見かけたが、なるほど快適な図書フロアだ。過去の図録からも豊後南画や「ネオダダ」関連企画の充実ぶりが伺えるが、「ザ・ドラえもん展」などユニークな巡回展もチョイスされているようだ。この時期の特別展「日本美術の至宝展」も気になったが、入門企画「アート・ワンダーランド」で館蔵品を楽しむ。写真作品ながら、森村泰昌には生で見なければ気付けない工夫がある。80年代によく見かけた山本富章は、近年ここで公開制作をしている。括りとは関係なく作家は生きているし、創り続けているということを実感。 屋外では、安藤泉の巨大な鍛金の像が豪雨に打たれていた。

 大分市のランドマーク、グローバルタワーは地上100mの展望台を有する。高所恐怖症の私を誘ってくれたやさしーい仲間の配慮には涙が出るが、ここもまた磯崎建築。震える足で踏みしめる。

 戦前からあったホテルを利用したのは別府市美術館。日本の近代絵画や公募団体系の絵画中心の展示だ。らしからぬ特異な雰囲気もまた楽しいが、お世辞にも展示向きの作りであるとは言えず、折角のビッグネームの作品(安井曾太郎、梅原龍三郎ら)も活きていない。おもちゃや紙幣、民俗資料のコーナーの併設が全体的に散漫な印象を与え、良くも悪くも秘宝館ノリ。

 竹の博物館では、この地の伝統産業である竹工芸の粋が見られる。建築自体、竹材が多く利用されており、落とす影も涼しげな竹のトンネルが展示会場へ誘う。(勅使河原宏のインスタレーションか?)展示品は日用品から家具・オブジェなど多岐に渡るが、割り方や生かす面の決定など、驚くほど柔軟な考えで竹の特性を生かしていることが分かる。素材に精通するとはこういうことなのだ。


 アートはどこにでもある。それを楽しむ人と共に。そして列車は動き出す。

 


(2004/10月・都城市立美術館 美術館連絡協力会・MCMACLUB 刊)


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