光野浩一、某日の記憶のかけら。




Sep.29th.2013






かごしまアートフェスタ2013。記念トークのゲスト情報に驚き、いてもたっても堪らずに会場を目指す。


巨匠・冨田 勲。


TVの成長と共に有り、幾多の名曲を生み出した偉大な作曲家。そして、他の追随を許さない稀代のシンセシスト。

小学生の時分に『宇宙幻想』を手にして以来のヒーローだ。レコード盤に穴が開くほど、とはあの状態を指すのだろう。


元来メカフェチであった自分自身がシンセサイザーの実機を何台も遍歴するきっかけとなった人物であることは勿論だが、

芸術家への憧れや職人芸に対する畏敬の念を抱くようになったのは、冨田氏の作品に依る所が大きい。


Ars Electronica参加作家だけあって現代美術に対する造詣の深さに驚かされたが、冨田氏の本質は常に新しい方法を取り込んで自分のものにし続けるところにある。

なにより自分は音楽家であるという姿勢を崩さないこと、その充実した力量が彼を「かつてのパイオニア」としてノスタルジーの彼方に埋もれさせたりはしない。


宇宙、そして少年時代の話。そのどれもが音に対する鋭敏な感覚に彩られている。


トーク終了後、同席された河口洋一郎氏、樋口真嗣氏を袖にする体で申し訳なく思ったが、強引に握手と写真を申し出る。

多少驚かれたご様子だったが、微笑と共に差し出された手はしなやかだった。