福岡市での個展。近年展開しているシリーズ新作です。

光野浩一展

『 STAND ALONE 』

2017.11.27〜12.10 福岡市・アートスペース貘



INSTALLATION  『 STAND ALONE 』

 

ほの暗い展示室。白い室内の中央に十字型の板が浮き、上に黒いコートが立つ。

また、四方の壁は薄板状のユニットで埋められている。




中央の黒いトレンチコート。実際着ると手が出ない程に袖は長い。無骨な形状は甲冑を連想させる。
   

コートは分厚いゴム製で、周囲に特有の匂いを漂わせる。襟は高く、中の空間を強調する。

 

 

十字型の台。ごく薄い板が床から浮いて見える。コート下から道が延び、盤面の外に延びている。

ボードゲームのパーツで街並みが作られているが、コートから離れるにつれ、建物は姿を消す。

   

わずかに壁面から浮くジオラマは一見ランダムに散らされて見えるが、道の繋がりを予感させつつもあからさまな関係性を持たないよう配置されている

ここに建物は見られない。




『STAND ALONE』

今作は心の停滞を形にし、対峙することをねらいとした作品で、コートは心理学に言う「ゴムの壁」(自己実現を阻み、家族の役割に引き戻す装置)から発想しています。

コートは鹿児島を拠点にマルチな活動を展開するアーティスト、カズヒロ ハカタさんに発注し、当方のデザイン画を基に何度もやりとりを繰り返した末に完成したものです。

個人は都市を内包します。観客が〈拘束/保護を暗示するコート〉・〈それぞれの繋がりが示されない多数のジオラマ〉の関連性に思いを巡らせることは、停滞する個人の生と社会の関係や繋がりの可能性・断絶について考えることと重なるでしょう。

思いのほか反響は大きく、難産である程に意味ある作品ができるという経験則を、またしても裏付けることとなりました。

このギャラリーに縁の深い、敬愛する作家の逝去・ドラマのロケ・観客をめぐるあれこれと、 会期中には多くの印象深い出来事があり、忘れられない発表です。