都城市でのグループ展。近年展開しているシリーズの大規模バージョンです。

南九州からのSINDOU


2012.5.2〜13 都城市・都城市立美術館


光野浩一 ・ 萩原貞行 ・ 近藤えみ ・ 南たえ子 ・ 本 武史

都城市立美術館企画『MESSAGE‘97』参加の光野浩一・萩原貞行が、その後交流を深めた南九州ゆかりの作家達と共に新たな振動・光景を発生させる試み。変貌を続げる南九州の現代美術シーンを、その只中にいる作家の目を通して切り取り、提示する。
震災の復興成らない時節柄、神経質にならざるを得ない言葉ながら、マグマ渦巻く南九州に生きる人間のルーツ・現に内在する心の動きまでもは否定できない。互いの姿勢に共鳴して集った5人が、観客へ更なる“good vibration”を伝えることを願って作品を展開する。

私と萩原さんの出会いは『MESSAGE 97』展、南さんともほぼその頃でしょうか。南さんは福岡のアートシーンの中心で活躍され、よく知られた作家であるにも関わらず、出身地宮崎で発表されたことはありませんでした。それは絶対に宮崎の損失だ!と思い、声を掛けさせていただきました。

圧倒的な力量の近藤さんと知り合ったのは2009年。ご出身は南九州ではありませんが、その頃よりこの地での発表を持たれることが増えました。どこかでご一緒しましょう、という話になっていましたが、本展ならびに熊本市の『九州コンテンポラリーアート展』の2本で実現しました。

実は福岡勢でお誘いしたのがもうおひとり、95年の福岡個展でお会いして以来のおつきあい、御歳90オーバーの斉藤秀三郎さん。
以前都城に住まれていたというご縁もありますが、なにより作品表現の新しさと深み、村上隆までもを語るアンテナの高さには驚かされるばかりです。
立ち上げ当初、お加減優れないとのことでご参加適いませんでしたが、その後お元気になられました。近いうち、別の機会にご招待したいものです。

発表ギャラリーを同じくする私自身、御三方の大ファンです。

最年少・本くんは以前から見知っていましたが、昨年同じアートの土俵で偶然再会。萩原さんの推薦もあり、作品を並べることとなりました。縁とは本当に不思議なものです。

 


INSTALLATION “SPINNING WHEELS (KMI)”

 

展示室内のほの暗い一隅。床面近くに白いジオラマが浮いている。 観客はここで作品を体験する。



ジオラマはすべてよく知られたボードゲームの部品の集積で構成されていることがわかる。
 
正面の壁では電光掲示板がランダムに“CHOOSE.”の文を流し続ける。


ジオラマのサイズは6.3×3.6m。20cmの高さで浮く。巨大ではあるが白一色のため、影でようやく構成物のボリュームが確認される程度で、上部の空間の広さが意識される。

自身の気配や違和感を感じながら、観客は作品に参加する。




“SPINNING WHEELS (KMI)”

SPINNING WHEELとは、回転する輪。一般的には紡績用の糸車の意で、ルーレットや歯車も指し示す。KMIはIATA(国際航空運送協会)の定める都市コード/空港コードで、宮崎を表す。

仮想のゲームへ参加する際に生じる違和感や迷いは、人生や幸福論に対するそれに重なる。
確かなことは、何も確かでないこと。それでも生きていくこと。

かつて展示を同じくした萩原貞行さんとの共同企画です。福岡での発表で知り合い、敬愛する作家との共演が実現した意義深い展覧会でもあります。

私自身がこの作品に投影するのは迷いや不安ですが、観客はもっと様々な想いを胸に鑑賞して下さったようです。陸前高田を思い出したという方、想像の道を豊かに紡いだ方、ここに住みたいと明確な夢を指し示した幼い女の子、創ることは既に肯定であり祝福だと励まして下さった作家の方…過酷な現実を超えるものがあるとするならば、それは並外れた創造力やユーモアなのかも知れません。

豊かな鑑賞眼で様々なことを教えて下さった地元の皆さん、遠方から駆けつけて下さった方々、大変感謝申し上げます。