恒例の福岡市・アートスペース貘での新作個展。チェス盤をモチーフとしたシリーズから離れた新展開です。

光野浩一展

“SPINNING WHEELS”

2010.11.29〜12.12 福岡市・アートスペース貘



INSTALLATION “SPINNING WHEELS”

 

わずかに暗い展示室内。床面近く・いっぱいの面積で白いジオラマが浮いている。床面は白いカーペットで覆われる。
観客は靴を脱いで室内に入り、作品を体験する。




ジオラマはすべてよく知られたボードゲームの部品の集積で構成されていることがわかる。

ジオラマ上には道が暗示されるだけの空きと、所々パーツの型のみが抜かれた場所が見られる。

   
正面の壁にはゲーム唯一のルールと目される“CHOOSE”の文字が配される。 空間はごく小さな音量のノイズで満たされる。(同ゲームの進行に使われるルーレット数種の回転音をランダムに重ねたもの。)

ジオラマ高は約二十数cmで、会場に足を踏み入れた観客自身の気配や違和感が意識される程に空間の広さを感じる。




“SPINNING WHEELS”

SPINNING WHEELとは、回転する輪。一般的には紡績用の糸車の意で、ルーレットや歯車も指し示す。仮想のゲームへ参加する際に生じる違和感や迷いは、人生や幸福論に対するそれに重なる。
確かなことは、何も確かでないこと。それでも生きていくこと。

「クール」「刹那的」との感想も頂きましたが、作者自身の立ち位置はそう落ち着いたものではありません。制作を突き動かすのは、迷いの多い日常を俯瞰することでそれらを静観したいという思いです。
しかしそれと背中合わせに、自己の消失に対する恐怖との戦いも始まるのです。