恒例の福岡市・アートスペース貘での新作個展。映像を構成要素とした初の作品です。
INSTALLATION 『 月 齢 』
薄暗い展示室内。正面の壁面にプロジェクタによる映像。天井にライトボックス。いずれも薄灯りで周囲を照らす。
観客は一段高い床面に足を踏み入れ、作品を体験する。 |
床面は中央に十字状の溝を持つ巨大なチェス盤状になっている。溝面には深いブルーのカーペットが敷かれている。 |
床面の十字の交点真上にライトボックスが配されている。画像はわずかに欠けた月。 |
正面の壁にはDVD映像がプロジェクタ投影される。映像は微速で回転するチェスのキング駒の影。全体のフォルムに変化はないが、最上部の十字形が太ったり痩せたり(ついには消滅したり)をエンドレスで繰り返す。 | 床のチェス盤・十字の断面にぎっしりとキング駒が並んでいるのが見える。駒はすべて異なるグレーで塗られており、床面を支えているように見える。 |
参加を宿命付けられた、否応ないゲーム。その中へ意識的に・または無意識のうちに身を投じる日々。出会いと擦れ違い、または衝突と回避。
夜毎の内省。他者との関わりに翻弄される現代人の挫折と回復。
映像の理解に必要な時間的拘束。その不自由さを嫌っていましたが、今回初めて必要性を感じ、ごくシンプルなものを組み入れる運びとなりました。「ローテク&ローファイ」が合言葉の映像制作でしたが、その狙いは成功したようです。ただし一方で、ライティングの難しさや奥深さをあらためて知った展示でもありました。