ぶらり散歩
9月に入って台風の連続で一度も磯に立っていない。
この寂しさはどこかで紛らわせなくてはいけないと思っていたら鍋ちゃんから電話が入った。
「今何しちょって?」
「なんもしちょらん…暇やからメダカに餌やっちょった。」
「じゃけら、今かい遊びけくるわ」
台風18号が近づいていることもあって沖合は波が高く、油津の磯場は何処も波をかぶって海の中に沈んでいるような状態になっている。
8月からずっーと週末ごとに海が時化ていることもあって、手持ちぶさたな日々を過ごした。
そんなときの鍋ちゃんの電話だったので「どこかに散歩にでも行くか」と、油津港の波止づりでも見学に行くかと、男二人のデートとなった。
男二人というのはチョット寂しい物があるが、油津港の新波止には沢山の釣り人達が竿を出していた。
ほとんどの釣り人は、サビキで鯵子釣りを楽しんでいるようだが、フカセ釣りでチヌやクロを狙っている釣り人もいる。
私たちが波止についたときに、丁度竿を曲げている釣り人がいたが上がってきたのは型の良いチダイだった。
新波止の付け根ではガンガゼの餌で石鯛釣りをしている人もいるがアタリは無いようだ。
波止の先端まで行ってみることにした。
一人で何本もの竿を出している人がいたが鯵子ねらいのようで、30リッター位のクーラーに満タンに釣っている。朝方は鈴なりで釣れたようだ。
そんなクーラーの中を覗いてみると、35センチくらいのカンパチが10枚くらい入っている。
「サビキだからあまり大きな物は釣れないけれど、かなり針を切られました。」
この言葉を聞いて私の釣りの虫が騒ぎ出した。
朝早くきて、アジゴの泳がせ釣りをしたら良型のカンパチが釣れないだろうか。
いや、きっと釣れるはずだ。
頭の中では泳がせ釣りの仕掛けができあがっている。
しかし、台風が近づいているのが分かっていて波止づりは難しいかな…という気持ちもある。
「鍋ちゃん、向こうに行ってみようか」
波止の付け根でフカセ釣りをしている釣り人のところにやってきた。
ふと見ると、海面に浮いている生け簀の中にシブ鯛らしき姿が見える。
「へぇーここでもシブ鯛が釣れるんだ」
変に感心してしまったが、ここは元々伊勢エビなどの漁場だった場所を埋め立てたところなのだ。
海底は岩場があって、起伏に富んでいるはずなのだ。
そんなことを考えていたら釣り人の竿がアタリをとらえて大きく曲がった。
見ていると海面まで浮いてきた小さなシマアジに、3キロくらいありそうなカンパチが襲いかかっている。
ガバッと銜えて海中深く力強く潜っていく。
竿先が海面に着かんばかりに大きく曲がっていて、見ている方も楽しくなってくる。
「もう少し粘って…」と思っていたが、シマアジを食い込みきれなかったのかはずれてしまった。
その後は、35センチくらいのカンパチがポツポツ上がっていた。
私の心の中は「油津の波止も捨てた物じゃないぞ」
来週アタリはカンパチを狙っているかもしれないな。