秋の水島クロの気配

 10月最後の日曜日、前日は時化模様ながら水島に上がる事が出来たようなので、今日も期待を持って夫婦丸に乗り込んだ。

 日曜日にしては、総勢9人と少ないかなと感じたが、常連の壱岐君や同年の谷口勝義君やらと賑やかな仲間達と一緒になった。
 水島の調子としては、日ムラがある時期ではあるが大物の期待は大である。
 夜明けと共に1瀬の舟着けで竿を出すが、下り潮の突っかけ潮でおまけに川のような流れの速さだ。
 「こんな潮の時は瀬際しかポイントはないね」
 と諦めて、ひたすら瀬際を攻め続けるが、何せ潮が速すぎてポイントが作れない。
 舟着けの釣り人達も、下り潮のあまりの速さにチョット竿を出しては休憩を繰り返している。
 しかし、こんなに早い下り潮でもポイントはある物で、裏のタンポではクロが湧いていた。
 そのタンポを取り囲むようにして数人の釣り人が竿を出しているが、30p超の地グロがポツポツと当たっている。
 しばらく私もその様子を見ていたが、狭いポイントなので此処での竿出しは出来ないと諦めた。
 
 勝義君は表のワレでオナガを狙って上かご仕掛けで頑張っているが、余り芳しくないようで800グラム程度の地グロが1枚釣れているだけのようだ。
 私も頑張らねばとひたすら瀬際を攻めるが、バチバチと道糸を引ったくっていくのはイスズミやサンノジなどの良型外道のみ…。
 「クロは見えているのだから絶対に釣れるはず…」
 自分で自分に言い聞かせながら竿を振り続けていると、隣で壱岐君が良型のイサキを釣り上げた。
 何でも良いから釣果があれば元気が出るのが釣り人である。
 
 串間さんも地グロを掛けてタモ入れしている。
 今度は私の番だとハリス2号に気合いを入れて、仕掛けを振り込んだ。
 辺りは直ぐに来た。
 
キザクラの環付きウキがすーっと海中に入っていくのとバチバチと強烈に道糸が走ったときが同時だった。
 竿が折れんばかりに曲がり、獲物は海底近くを走り回っている。
 この大物は逃がすわけには行かない…と気合いを入れてやり取りを繰り返すがウキが見えた瞬間に急反転されて、あえなくハリスが飛んだ。
 「くっそー、もう少しだったのに…」
 こんな時は隣の人が釣果を上げたりする事がある物で、壱岐君が良型のクロを釣り上げた。 
 
 私もハリスを結びなおして、再びトライする。
 しばらく撒き餌を直接ウキにかぶせながら海中に見える良型のクロが喰ってこないかなと思った瞬間に、先ほどと同じような強烈な辺りが襲ってきた。
 今度の獲物は先ほどよりも大物だったようで、走り話1度止めた後は一気に海底の沈みに入られてまたしてもハリスが飛んだ。
 「外道ばかりでやめるわけには行かない」
気合いは充分だったが、その後は当たりがピタッと止まってしまった。

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