50センチの尾長を手にした高野君

高野君の祝日

 7月の台風16号が襲来する前の週だったと思う
 私と高野君とのコンビで久しぶりに水島に釣行する事になった。
 この日は高野君にとって記念すべき一日となった、いわゆる高野君の祝日である。
 今頃書いてどうするの…と、高野君に怒られそうなので思い出しつつ書いてみる。

 このころの水島は、それ程好調といえる状態では無かったが撒き餌に群がるクロの数は多数見えていた。
 しかし、なかなか食いついてこない状態だったので「今日はボーズかも…」とつぶやく高野君の自信なさげな声が気になった。
 その高野君の横に座り込んで彼のウキの行方を見ていると、ゆっくりとした上り潮が流れている。
 「これは良いかもね」
 等と話していると、突然彼のウキが視界から消えた。
 グイ、グイ−ンと彼の竿がしなった。
 ハリスは2.5号をセットしているので少々の引きには耐えるはずと思ってみていた。
 彼の釣り場は鯛の高場だったので「下に降りてやり取りしろ」と促した。
 かなりの大物のようで何度も足下で突っ込まれている。
 海中にチラッと獲物の姿が見えた。
 「ヒツオやないですか。」
 「なん言うちょるな。尾長やがね」
 突然彼に緊張が走った。それもそのはず海面に浮いた尾長は有に50センチは超している大物だ。
 いたずら心でタモの先で突こうとしてみたら「何すんですか!」とムキになって言い返してきた。
 それじゃと直ぐに掬って彼の手にその大物尾長を手渡してやると
破顔一笑とはこの事と言わんばかりの笑顔で「ありがとうございます」と元気よく御礼の言葉が返ってきた。
 「良かったね、高野。おめでとう。」

 今日は、高野君の祝日である。  

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彼のトロフィー50センチの尾長

私もイサキをゲット