築島デンサンのクロ
2月5日、土曜日午前5時玄関のチャイムの音で目が覚めた。
先日の水島釣行の睡眠不足もあって、今日の築島釣行の同行者である山村さんが来るまでの仮眠のつもりが熟睡していたようだ。
荷物は全部車に積んであるので、直ぐに舳港へと出発する。
港に着くと既に先客が居て、午前6時30分の1番船に乗り込む準備を終えていた。
やがて、船長の車が来て、釣り客達を乗せて直ぐに出港。
5分くらいで最初のヤカタに瀬着け、順次釣り客達を降ろして行く。
私たちは、ズンブリに上がりたかったが予定を変更してデンサンへと降りる事にした。
船長は「アミガサも上がれるよ」と、言ってくれたがデンサンも久しぶりだったので迷いをふりきって上礁した。
潮の流れはゆっくりとした下り潮が行っている。
この流れが続けば、昼から夕方に掛けてはアタリがクロが当たってくると感じた。
しかし、予想とは大いに外れる物のようで、午前8時前に一隻の漁船が我々の方に近づいてきた。
エビ網を仕掛けている小型の漁船で、船上から奥さんと思われる女性がすまなそうな顔している。
我々が1時間近く撒き餌をうち続けてきたポイントに、伊勢エビ漁の網が入っていく。
「終わった…」
まだ午前8時を回ったばかりなのに、そう感じた。
その後、1時間ばかりして、またしても別の漁船がやってきて、海中をのぞき込んでエビ網を沈み瀬周りに落とし込んでいった。
これで本当に終わったかな…と、思い始めた頃から、時々潮が沖に向けて流れるようになった。
この潮を釣らなければ、今日のクロは望めないかもしれない、と頑張って竿を振っていると、今度は満潮になってウネリが足下を洗い始めた。
しかし、気になるほどではないので、頑張ってクロを狙い続けるが、どうしても潮の流れが安定せず、ドーンと来るようなクロのアタリが出ない。
そんな、じれったい時間が過ぎていって納竿近くの午後3時すぎ、山村さんの竿が突然引ったくられるようなクロのアタリを捉えた。
足下からわりかし深くなっているデンサンはクロとのやり取りも楽な場所であり、慎重にゆっくりと浮かしに掛かる。
海面に姿を見せたのは1キロを優に超している見事なクロだった。
「撒き餌を残しても仕方ないと、思い切ってバンバン撒いたのが良かったのかな」
山村さんが、してやったりと笑顔を見せている。
これを見たら余計頑張らなくては、いけない。
オオミゾでも、竿が曲がってクロがタモに治まっているのが見えている。
私も負ける物かと私も竿を振るが、益々高くなってきたウネリにアミガサや、ヤカタの釣り客達も竿をたたみ始めた。
これからという時間帯に入ったのだが、後ろ髪を引かれる思いで納竿とした。