潮って何だろう

　クロ釣りを楽しむために、絶対にさけて通れないものは「潮を読む」と言う事だろう。
　この事が上手くいかないと、タナ取りが上手くできないし、撒き餌を打ち込む場所も、釣り座の決定もままならないと言ったジレンマに陥ってしまう。
　逆に上手く潮が読めて、自分の思う場所で釣りが出来たときは、その日一日がとても楽しく、俺はクロ釣りの名人だ…という気持ちになれる。
　
　最近、いろんな釣り雑誌をにぎわしている全層釣法もこの潮という大敵を、いかに味方にしていくかという観点から竿を出すと、無意識のうちに潮を読もうとするようになってくる。
　潮を読むと言っても、上り潮か、下り潮か、又、これらの潮がどのように変化して流れているかという事になる。
　上り潮を「上げ潮」、下り潮を「下げ潮」と言うところも九州には可成りある。
　私の考える潮というのは幾通りか在って、海面は流れるが海中は余り動かない潮、逆に海面は余り動かないが海中を流れる潮、海底付近を流れる潮、潮と潮があたって沈み込みになっている潮、等々磯場で良く目にするこういった潮以外にも、２枚潮なども含めると沢山の潮の流れがあって、その一つ一つが釣り人にとっては難題となる場合が多いのではないだろうか。。
　これらの潮が自分に味方になってくれる事は、年に何回あるだろうか。
　クロ釣り自体、釣りの腕云々よりも、潮による釣果への影響が大きく比重を占めていると思う。
　実際に、このポイントでこの潮が行けば、確実にクロが釣れると確信を持てる流れがある。
　時には水温の変化などで食いが落ちる事があるが、そのような潮を目の前にしたときは、心が弾んでクーラーの中にクロが入っている事を勝手に想像してしまう。
　
　上がった磯際に立って、潮の色が青味が濃いかったり、逆に緑色掛かった色だったりしたときなどは水温の変化を連想してしまうものだ。
　青味が濃い時は、バケツでくみ上げた海水に手を浸けると暖かく感じて、クロの動きが活発になる事を予想させる。　
　この潮が暖かく感じると言う事は、クロ釣りだけではないが他の釣りにも共通して言えるようにターゲットとなる魚たちが活発に補食に動く事が多くなってきて、釣り人にとっては好釣のバロメーターにもなる。
　実際に、クロが活発に当たるときの水温というのは、撒き餌にほのかな暖かさを感じる事が出来るものだ。
　一方、緑掛かった色の場合は、水温が下がっている事が多く、クロのタナが深くなっている事や、動きが悪くなっていて撒き餌に対する反応も鈍いものになってしまい、その日一日の不調を連想させる。
　これまでのクロ釣りにおいても「潮色が悪くなった、刺し餌が冷たくなった」という言葉を多く聞くのも、この緑掛かった色をした潮の時が多かった。

　今まで気づかなかったのかもしれないが、最近、表面近くと海中とで水温が違っている潮に遭遇した事がある。
　この時は、表面近くには餌取りも居なくなって、撒き餌を打ってもクロが喰ってきそうな気配すら感じなかった。
　しかし、海中３ヒロくらいまで仕掛けを入れていくと何かしらのアタリは感じ、「何か当たるが引き込まない」と言った、苛立ちを覚えた。
　結局は、昼近くになって上り潮が入るようになってクロのアタリが出始め、どうにか３０�p強のクロをゲットする事は出来た。
　また、私の釣り座の前が潮の分かれ目になっていて、振り込んだ仕掛けに撒き餌をかぶせると、仕掛けと撒き餌が別々の方向に流れていって、仕掛けと撒き餌の合流点が一定せずに、釣り上げるクロの数が思うように伸びなくて困った事も最近はあった。
　この様な突っかけ潮で、潮の分かれ目があり、その分かれ目になっている箇所が右にふらふら、左にふらふらと流れ動いて、仕掛けの投入点が一定しないと言う潮は、釣り人泣かせの最悪の潮と言えるのではないだろうか。
　
　私が時に迷う潮があるのは、上り潮でも、下り潮でも前回の釣行時と同じ流れのように見えているのに、いっこうにクロの当たる気配が感じられない潮である。
　「この前と同じ流れなのに、どうして今日は食いが悪いのだろう」
　このような疑問を感じられた釣り人は、多いのではないだろうか。同じポイントで、同じ仕掛けで攻めているのにクロがなかなか思うように当たらない。
　人間には分からない、一寸した海中における潮の変化が微妙にクロに影響している場合がこうなるのだろうと思うが、仕掛けに着けている小物類の道具をはずしたり、または追加したりする事でその日の潮の変化にマッチして思わぬ釣果に繋がったりする。
　これも潮の変化のいたずらだろう。
　本来、九州の東側は北に向かって流れる「上り潮」を本命とするポイントが多いと思うが、いくら上り潮が通しても、海中の何らかの変化に気づかないときや、潮の速さなどで仕掛けが浮いてしまって、上手くクロのタナまで仕掛けを持っていけない時などは苦戦は必至である。
　同じように見える潮でも、日々その変化はある物で、その一寸した変化が、その日のクロ釣りの仕掛けに影響する事は多々あるものだ。
　潮といかにつき合ってクロ釣りを楽しむか、永遠につきない釣り人の課題であろう。

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